中国語の標準語はなんですか?

 ある大学の控室でフランス人の先生から聞かれた。
 「中国語の標準語はなんですか?」。
 この問題に答える為に,まず,中国の民族事情を理解してもらわなければならない。皆さん良く知っていると思うが,中国は多民族の国である。現在,法律上56の民族が存在している。中国全国の人口の約90%は漢民族である。他の55の民族は全人口の約10%に過ぎない。その為に漢民族以外の55の民族は少数民族と呼ばれている。
 この56の民族は様々な言語を使っている。その中で独自の言葉と文字を両方持つ民族言語はいくつか存在している。例えば,中国語,モンゴル語,チベット語,朝鮮語,ウイグル語,ロシア語,満州語等。文字を持っていない言語もいくつかが存在している。どの民族の言葉を国の公式言語にするかは大変大きな問題である。
 現在中国の法律上,主に漢民族が使う「漢語」が全国に通用する公式言語と定められている。文字通り「漢語」は漢民族使う言語という意味だ。
 問題は「漢語」が中国語の標準語ではないことだ。なぜなら,漢語の中にもたくさんの方言が存在している。日本の書店でよく広東語の教科書を見かける。広東語はその漢語方言の一つである。日本にも方言はあるが,漢語の方が方言の種類が遥かに多い。その上に分かりにくい。約20年前に結婚した当時,妻を連れ上海に行った。大雨の中でこの中国人の私さえ傘売りのおばさんの方言が強くて傘の値段を聴き取れなかった。勿論,上海でこのような意地悪いおばさんが多くないはずであることを祈るが・・・
 たくさんの方言が存在している状況の中で漢語の標準語を決めることが大変重要なことになった。私たちがよく言っている方言とは,基本文法が同じでも違う発音と言い方があることを指している。
 日本語を例として見よう。
 妻の叔父さんは鹿児島出身で,彼は「そば(蕎麦)」を「そま」と読んでいる。これは発音の違う方言だ。福岡のスーパーで「かしわ飯」というおにぎりを販売している。この「かしわ」はなんだろう?東京の皆さんはわからない。東京では「鶏肉」という。これは言い方の違う方言だ。中国語の方言も同じである。
 現在,中国の法律上で標準語―漢語の「普通話」に関して次のように決められている。 
 第一,普通話の発音は北京方言の発音を基準にする。
 第二,普通話の言い方は北方方言の言い方を基準にする。
 厳密には北京方言も「方言」なので「普通話」ではないが,「普通話」に一番近い方言であると分かるだろう。
 最後に,よく台湾旅行に行く方も安心して頂いて良いのではないかと思うが,台湾の標準語も「普通話」である。台湾では「国語」と呼ばれているけれど・・・